ぼくはこう思う、みんなはどう?

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【地名】江戸城三十六見附の橋シリーズその3〜地名を読み解くシリーズ第10弾

江戸城三十六見附の橋シリーズ第3弾です。

橋シリーズの以前の記事はこちら。

【地名】江戸城三十六見附の橋シリーズその2〜地名を読み解くシリーズ第9弾 - ぼくはこう思う、みんなはどう?

【地名】江戸城三十六見附の橋シリーズその1〜地名を読み解くシリーズ第9弾 - ぼくはこう思う、みんなはどう?

【地名】架かる橋は江戸城防御の名残り〜地名を読み解くシリーズ第8弾 - ぼくはこう思う、みんなはどう?

 

今回は前回ご紹介した常磐橋門と神田橋門の近くに位置する、一ツ橋門と雉子橋門(きじばしもん)の地名・歴史を読み解いていきます。

まずは位置関係の確認。

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f:id:hundreds_of_works:20200411132912p:image出典:大江戸今昔めぐり

一ツ橋門と雉子橋門は皇居の北東に位置しており、江戸城の見附(警護のための門)としての役割を担っていました。

 

●一ツ橋門

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f:id:hundreds_of_works:20200410034410p:image出典:大江戸今昔めぐり

f:id:hundreds_of_works:20200411112606j:image出典:Wikipedia

日本橋川に架かる一ツ橋(一橋)に由来しています。一ツ橋付近はもともと日本橋川と小石川(現在の白山通り)の合流地点であり、合流点を表す「一つ」がこの地点に架かる橋の名称、さらにこの付近の地名になりました。

 

地名にちなんだ現在も残る名前として、一橋家があります。

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以前の記事で徳川御三家についてお話した、徳川家康の十男頼宣(よりのぶ)が家祖となった紀州徳川家から初めて輩出された将軍が徳川吉宗で、また吉宗が子の宗尹(むねただ)に一橋門内に屋敷を与えて創設したのが一橋家です。(地名は「一ツ橋」と表記されますが、家名は一般に「一橋」と表記されます)

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これは徳川御三家と同じ役割で、徳川将軍家に後嗣がないときに後嗣を出すためのものでした。実際に一橋家の9代当主の慶喜水戸徳川家から養子として迎えられた)は江戸幕府最後の将軍となりました。

また、一ツ橋門があった辺りに小学館およびその関連会社(集英社など)の本社が集中していることから、出版業界ではそれら企業群のことを俗に「一ツ橋グループ」と呼ばれるそうです。

 

●雉子橋門

f:id:hundreds_of_works:20200412091600p:image出典:『旧江戸城写真帳』

左側に見えるのが雉子橋門で、門扉が半分開いて人影が見えます。

現地にある案内板には以下のように由来が書かれています。

家康公関東へ御打入以降唐国帝王より日本へ勅使わたる数百人の唐人江戸へ来りたり。是らをもてなし給ふには雉子にまさる好物なしとて諸国より雉子をあつめ給ふ此流の水上に鳥屋を作り雉子を限なく入置ぬ其雉子屋のほとりに橋一ツありけりそれを雉子橋と名付たり

朝鮮通信使をもてなすためのキジを囲う鳥小屋がそばにあったため、雉子橋と呼ばれるようになったということです。

戦後間もなく日本の国鳥に指定されたキジですが、古事記に記されるほど昔から日本には馴染みの深い鳥で、古くから狩猟の対象でした。

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鳥の中でもキジ肉は最上の部類とされ、平安時代の宮廷料理や武士の贈答用や、元旦の祝膳に用いられていたそうです。

 

この雉子橋門を起点に時計回りに新たに開削した神田川に至るまで、全長14kmの外堀を巡らせていました。

f:id:hundreds_of_works:20200412085742p:image出典:江戸城三十六見附門 : 大江戸歴史散歩を楽しむ会

また、江戸城本丸に近いため警備も厳しかったといわれており、「雉子橋でけんもほろろに叱られる」という川柳も残されています。

ちなみに、慣用句の「けんもほろろ」の語源はキジから来ています。

けんもほろろとは、人の頼みごとを無愛想に拒絶する様子を表す言葉で、「あいつのところへ金を借りに行ったが、けんもほろろに断られた」などと用いる。「けん」はキジの鳴き声、「ほろろ」もキジの鳴き声または羽音といわれており、いずれにしてもキジが「けん」とか「ほろろ」とか鳴き、羽音を振るわせて飛び立つ様子が無愛想であるところからきている言葉らしい。

引用:笑える国語辞典

 

今回は一ツ橋門と雉子橋門の2つについて読み解きました。

この辺りは皇居にも近いので、東京見物で皇居を訪れた際はぜひこのあたりの散策をして、「ここに一橋家の屋敷があったのか」「このあたりにキジの小屋があったんだなぁ」と昔に想いを馳せると面白いと思います。

今日はこのへんで。

ではまた。

 

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