【地名】「茅場町」日本の原風景であり万葉の昔から愛されたあの植物〜地名を読み解くシリーズ第2弾
朝の東西線には絶対乗りたくないぼく(ぼくみん (@b0kumin) on Twitter)です。
関東の方ならご存知の方も多いでしょうが、千葉と東京を結ぶ東西線は首都圏の乗車率で199%(木場→門前仲町:2018年度)を叩き出す最も混雑する電車です。
出典:GoogleMap
今回は、日本橋や東京証券取引所にもほど近い茅場町の地名の謎に迫ります。
茅場町の「茅」とは、ススキ・ヨシ・チガヤなどのイネ科の多年草の総称です。
現在の茅場町がある場所は、江戸城が築城された15世紀頃は茅の材料となる植物が生い茂る草原で、屋根葺(やねぶき)の材料となる茅で商いをする商人が住んでいた場所と伝えられています。
かつての農村では、集落周辺の一定地域を「茅場」として管理しており、定期的に草を刈り、春先には火入れ(いわゆる野焼き)をしてススキの群落は健全に保たれていました。
出典:すすき草原の野焼き | 【公式】箱根ハイランドホテル|箱根、仙石原の自然に囲まれたリゾートホテル
茅の主な使用目的として屋根材がありました。茅葺き(かやぶき)ですね。
今や見ることの少ない貴重な草屋根ですが、世界遺産白川郷や伊勢神宮正宮・別宮などの社寺建築では現在も茅葺きを維持しています。
出典:Wikipedia
茅葺きの屋根は20〜30年もつ高い耐久性があるのに対して、藁葺き(わらぶき)屋根は10年ほどと耐久性がよくありません。
その理由としては、藁(イネや小麦などの茎)は水を吸って腐りやすいのに対し、茅の茎は油分があり水をはじくからであり、旧来の日本家屋では茅は最も重要な屋根材として扱われてきました。
このように茅葺き屋根の材料として、また家畜の餌や田畑の肥料、燃料として茅は非常に需要の高い植物だったのです。
ちなみに、名古屋市の「萱場(かやば)」、北海道一の歓楽街「すすきの」も同じ理由かつ当時の名残りです。
出典:すすきのはしご酒大会|2時間の探訪で札幌・ススキノの魅力を再発見! | たびらい
余談ですが、茅の一つであるススキは動物の尾に似ていることから尾花とも言われ、秋の七草に数えられます。
出典:秋の七草とは?その時期はいつ?花言葉は?名前の覚え方や意味や由来についてご紹介します
実用的として重宝されただけでなく、万葉集にその名が載るほど昔から愛されていた秋の植物でもあったのです。
秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花
引用:萩の花尾花葛花瞿麦の花 女郎花また藤袴 朝貌の花 (山上憶良)
余談の余談ですが、ぼくが近年最もハマったドラマ「グランメゾン東京」。
出典:https://mainichi.jp/articles/20191228/dyo/00m/200/005000c
このドラマでキムタクが演じた主人公、尾花夏樹の苗字は、ススキのことだったんですね。
今回ご紹介した「茅場町」にも奥深い歴史が隠されていました。
これからも地名ハンターとして東京の地名に隠された歴史を探求していきます。
今日はこのへんで。
ではまた。
最後に。
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